ここではわたしが聞いた、見た、体験した、素敵だと思ったホスピタリティの事例をここで少し紹介します。ウエディング・レストラン・お住まいと人生に関わるサービスで行われている事例はやはりすばらしいなと感じました。

  • プロポーズのシーンでのホスピタリティ

リッツカールトンの書籍 で紹介されていた事例なのですが、ある日、リッツカールトンに泊まっていた男性の方がスタッフの人に「今夜、この浜辺でプロポーズしたいので、できればビーチチェアを一つ残しておいていただきたいのですが」と依頼したそうです。依頼を受けたスタッフの人は、ビーチチェアの他にビーチテーブルと、ビーチテーブルに白いテーブルクロスを引いて、お花とシャンパンを置き、プロポーズする際に、砂浜なので膝が汚れないようにとビーチチェアの横に白いタオルを敷いたというエピソードを知りました。このように、お客様が頼んだことだけをそのままするのがサービスだとすれば、依頼された事象から、お客様が何を望んでいらっしゃるのかを想像して行動に移すことこそがホスピタリティだと感じました。

【参考】高野登 「リッツ・カールトンが大切にするサービスを超える瞬間」

  • お客様満足と従業者満足を満たした建築会社

名古屋市に本社を置くアーキッシュギャラリーという建築会社があります。東証に上場しており、商業建築や開発、住宅など幅広く携わっています。クリニックや医療施設などにおいても、「ホスピタリティの追求」を明言されています。建築デザインのみでなく、経営方針・医療方針などをヒアリングするところからはじめ、その魅力を引き出すとともに、街のランドマーク的存在になるようにプランニングされています。また、前出のお客様満足と従業者満足とがバランスよく成り立っている会社だという印象も受けました。働く社員さんの言葉にも「何事にも挑戦的な社風のため、自身の範疇を超えて挑戦することができ日々成長を実感できる環境です。また、営業・施工・積算・設計とあらゆる部署との関係が近いためそれぞれのノウハウを吸収できるのも成長へと繋がっています」「営業・設計・施工が一体となって働く環境が整っており、業種を跨いで経験を積むことで、自身の総合力をより高めることができます。また一邸一邸が全く異なる建物なので、細かいディテールや納まりをどこまでも追求し、お客様満足を考えて仕事ができる会社だと思います。」など部署通しのつながりが濃く、お客様のことを考え、仕事を楽しまれている様子が感じられます。

【参考】

新建築社「新建築住宅特集 2014年12月号」

クリニック・サロン施工実績(アーキッシュギャラリー )https://www.archish-g.com/business/clinic/clinic7.html

  • お客様の動きを想像したサイト設計

同じく名古屋に店舗があるファミリアホームサービスという不動産会社は、不動産業界の中では珍しく、司法書士、土地家屋調査士、行政書士、建築士が在籍する司法書士法人をグループとした形態をとっています。売上げ至上主義ではなく、顧客の満足を第一に考える会社で、「社員自身の心が充実していなければお客様の幸せのお手伝いは出来ない」ということで、職場環境の整備などにも力を入れている会社です。

ホームページもよくつくられており、住まい探しをするお客様の動きを想像した流れを設計し、作られているんだなと感じます。たとえばエリアガイドにおいては、その地域のことをまとめた上で、家を買う人、売る人への配慮、気になる最寄駅や小中学校の不動産情報まで、ほしいなと思った情報がうまく網羅されています。一方的な情報提供ではなく、お客様は何を求めているだろうか?とその立場に立って想像することは、対面コミュニケーション以外でも有効だなと感じました。

【参考】津島市エリアガイド(ファミリアホームサービス ) http://familia-hs.co.jp/area/tsushima/

  • レストランのパーティーのシーンでのプロ意識

わたしは以前、名古屋のホテルのレストランで開催されたフルコース料理を味わえるパーティーに出席したことがありました。とあるテーブルで、見事に赤ワインが入ったグラスを倒してしまった方がいました。しかし、そばにいたス接客スタッフの人は、すぐに真っ白いナプキンでさっと隠すように覆い、さらに白いナプキンをかけ、何事もなかったように赤ワインをお客様のグラスに注いでいました。そのときに初めて、「どうぞ」と落ち着いたやさしい声をかけていました。その間わずか数秒の出来事。グラスを倒してしまった方は、恥ずかしい気持ちを察知し、あえて言葉をかけないという思いやりの心で接したのです。これもホスピタリティの一つであると思います。

  • 順番待ちのファミリーレストランでの心づかい

人気のファミリーレストランでは、お昼時などは、お店の外で並んで待っているお客様の列をよく見かけます。以前わたしが行ったファミリーレストランでもそんな光景がありました。来店したお客様から順番に、予約の紙に名前を書いていきます。ほとんどのお店は、お通ししたお客様の名前の上に横線を引いて消したり、チェックをつけていることが多いです。でも、このお店では、お通ししたお客様の名前の横のチェック欄にハンコを押していました。ハンコの文字には「感謝」と書かれていました。お客様の名前を何気なく横線で消してしまうのは、なんだか作業のように感じてしまいますが、このお店のように、感謝のハンコを押されるととても気持ちが良いなと感じます。また、次に名前を書く人もとても気持ちが良いなと感じるのではないでしょうか。

サービスとホスピタリティの違い